うつは「心のカゼ」と喩えられるほど罹りやすく有病率は5−8%とされている。生涯有病率は男性15%、女性25%と言われる。発症年齢は小児期から老年期に渡り、事務作業等体を動かさない(これはリスクファクターのひとつと考えられている)に従事する層と高齢者の増加とに伴い、今後ますます社会問題化していくのではないかとの危惧もある。
うつ病は精神的な症状及び身体症状が見られる。
精神的な症状としては主に、抑鬱気分、気分変動、絶望感、不安、焦燥、自殺観念、心気妄想、罪業妄想等があり、抑制症状と呼ばれる行動の変化が顕れる事もある。
身体的な症状としては、睡眠障害(特に早朝に目覚め、寝付くことが出来ない例が多いとされる)、過眠、食欲不振、過食、全身の倦怠感、疲労感、吐き気や腹痛、過呼吸症候群、頻脈や心悸亢進、頻尿、口渇、発汗、眩暈、便秘、性的障碍、月経不順などの自律神経や内分泌系の症状が顕れる。
身体的症状の自覚が目立ち、抑鬱状態などの精神的症状の自覚が目立たない状態のうつ病を特に「仮面うつ病」と呼ぶ。この状態の患者には自らがうつ病であるとの意識がないため、精神科ではなく内科等を受診し、その結果原因がうつ病であると発見されないことが多いが、放置した場合重症化するケースもある。
抑鬱状態が激しく自殺念慮や自殺企図に至る等の、特に重症の状態をさして「大うつ」「大うつ病」と呼ぶことがある。
強迫症状やパニック障害・不安障害を併発する場合もある。 追い込まれた場合、足がすくむなどの恐怖感・不安感を覚えることもある。
12歳未満の児童期は0.5〜2.5%、12〜17歳の思春期以降では2.0〜8.0%の有病率が認められる。軽症のうつではいらいらしたり、少し落ち込んでいるようにみえたりするだけでうつ病体験を言語化しないことが多く(発達段階によっては出来ない)頭痛や腹痛等の身体症状や不登校等の行動面での変化がが特徴である。
投薬治療は三環系抗うつ薬を少量、慎重に増量することが推奨されている。SSRI, SNRIは安全性の問題が指摘され日本をふくむ数国では18歳以下で禁忌となっている。
親子関係の見直しや学校との連絡などで環境を整えること、遊戯療法や箱庭療法などの非言語的精神療法等を投薬と同時に 行うことがもっとも効果があるとされている。
うつ病の原因や薬効原理はわかっていない。一部のうつ病では脳内の神経伝達物質であるセロトニンの濃度が低下している場合があると考えられており、これは後述する選択的セロトニン取り込み阻害薬(SSRI)の薬理機序を説明する場合にも用いられる。しかし他にも心的外傷後ストレス障害と同様に神経細胞自体に物理的な破壊が起こっている、セロトニン以外にもノルアドレナリン、ドパミン(ドーパミン)等の機能低下、コルチゾール系の分泌異常、海馬の異常、前頭葉・帯状回の血流低下など様々な生物学的要因が提唱されているし、今日のようにうつ病と呼ばれる範囲は広まりつつある現状では、このような生物学的変化を伴わないうつ病も少なくないと推測される。特に「うつ病→セロトニン欠乏→抗うつ薬SSRI」という安易な仮説は、抗うつ薬の宣伝などに利用されやすいので、その科学性を慎重に評価する必要がある。
治療の基本は患者をストレスから解放する事である。
例えばうつ病の患者は責任感が強いので、叱咤激励してはならない。具体的には「頑張れ」や「甘えるな」という言葉が患者を追いつめるので注意が必要である。不用意に励ますと余計責任を感じてしまい、それがストレスとなって病状が悪化し、最悪の場合は自殺してしまうこともある。逆に「心配するな」「気楽に行こう」と声をかけ不安を和らげさせることが重要である。
「重要な決断は先延ばしにする」。例えば転職・退職、離婚するか如何かと言った重要な決断はなるべく後回しにして、思考が低下した状態にある患者に無理をさせてストレスを与えたり、誤った判断をさせない事が大切である。
十分に休養させること。
どれを選択するかは症状や環境などに左右されるが、大雑把なガイドラインとしては以下のようになる。
必ず専門家の判断を仰ぐことが第一に求められる。自傷行為を行う患者の場合等と比較し、重症のうつ病患者が自殺を図る場合確実に成し遂げられる方法を選択することが多いとされ、医師などの助力を得ずに対処することは大変危険である(なお、うつ病の場合、周囲に自殺念慮をほのめかすのは重症とされており、差し迫った自殺の危険性があるため速やかに医師の診察を受けさせる必要がある)。
軽症の場合は最近の米国精神学会のガイドラインでは、薬物療法を行わずに精神療法(所謂カウンセリング)のみを行うという選択肢も記載されている。
中等症以上の場合は、薬物療法を併用する。
重症の場合、ストレスから身を遠ざける為に仕事を休むなどしっかりとした休養を取ることが必要になる。また、場合によっては入院を要する。とくに自殺の危険が高い場合などには、医療保護入院という本人の意思によらない強制的な入院(家族、保護者等の同意は必要)が必要になる場合もある。ただし、入院によっても自殺が完全に防げるわけではない。
極めて重症の場合、治療により少し病状が改善してきたときに、自殺を図ることがあるので注意を要する。これは極めて重症のときは「自殺への意欲や決断力」も低下しているので自殺を実行に移せないが、病状が改善してくると「抑うつ気分」が残ったまま「自殺への意欲や決断力」が出てきて実行してしまう恐れがあるからである。
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